川西市の皮膚科・形成外科による解説|疥癬(かいせん)
疥癬(かいせん)は、「ヒゼンダニ(疥癬虫)」という目に見えないほど小さなダニが皮膚の角質層に寄生することで起こる、激しいかゆみを伴う皮膚の感染症です。人から人へ感染する疾患であるため、適切な早期診断と確実な治療が極めて重要です。そのまま放置するとご家族や身近な方に感染が広がってしまうリスクがあります。
疥癬の2つのタイプ
疥癬には症状や感染力の違いにより、大きく分けて2つのタイプが存在します。
1. 通常疥癬(多く見られるタイプ)
- 症状:首から下(手足・脇の下・お腹・股関節など)に赤い丘疹(ブツブツ)が生じ、特に夜間に強いかゆみがあらわれます。
- 特徴的なサイン:手のひらや指の間、手首に「疥癬トンネル」と呼ばれる線状の病変が見られることがあります。
- 感染力:長時間の直接的な肌と肌の接触(添い寝や介護など)により感染します。
2. 角化型疥癬(crusted scabies)
- 症状:皮膚全体が厚くゴワゴワになり、灰白色から茶褐色の硬いかさぶた(痂皮)で覆われます。かゆみをあまり感じない場合もあります。
- 感染力:感染力が極めて高く、剥がれ落ちた角質(フケのようなもの)からでも感染が拡大します。高齢の方や免疫力が低下している方に生じやすい傾向があります。
- 治療法:通常疥癬よりも治療の難易度が高く、外用薬と内服薬を組み合わせた総合的な治療を行うため、当院では必要に応じて高度専門医療機関と連携をとって対応いたします。
診断・検査法
適切な治療を進めるためには、症状の確認に加えて「ダニ本体や卵の存在を確認すること」が重要です。
- ダーモスコピー検査(拡大鏡):特殊な拡大鏡を用いて、皮膚表面の疥癬トンネルやダニの存在を直接観察します。高精度な観察が可能です。
- 顕微鏡検査(鏡検):皮膚の角質を一部採取し、顕微鏡下で成虫、幼虫、または卵の有無を確認します。
保険診療に基づく主な治療法
日本の診療ガイドラインに従い、保険適用となっている外用薬(フェノトリン・硫黄製剤)や内服薬(イベルメクチン)を用いて処方を行います。
■ 外用薬(塗り薬):フェノトリン(スミスリン®)等
首から下の全身、足の先まで塗り残しのないよう散布することが重要です。指の間、爪の周囲、背中なども丁寧に塗布します。塗布後、規定の時間(通常8〜12時間)を置いてから洗い流します。塗り残しを作らないことが治療成果に直結します。
■ 内服薬(飲み薬):イベルメクチン(ストロメクトール®)
ダニの神経や筋肉に作用して駆虫するお薬です。
【服用の重要なポイント】
イベルメクチンは食事と一緒に(食後に)ご服用ください。食後に服用することで体内への吸収率が高まり、皮膚組織への薬効が十分に発揮されます。空腹時の服用では十分な効果が得られない可能性があります。
原則として1回目と、その1〜2週間後の計2回服用するスケジュールが推奨されています。
※ 体重15kg未満のお子様や妊娠中の方への使用には制限がありますので、診察時に必ずご相談ください。
■ 硫黄製剤など
ご年齢、体質、お肌の状態に合わせて、最も適切な外用処方を選択いたします。
ご家族・同居者の同時治療(重要)
同じ住居で生活されている方は、現在症状が出ていなくても同時に治療を開始することが強く推奨されます。
疥癬は感染してから実際に症状があらわれるまでに数週間の潜伏期間が存在します。この期間中も知らず知らずのうちに周囲へ感染を広げてしまう可能性があります。治療のタイミングがずれると、家庭内で繰り返し感染させ合ってしまう「ピンポン感染」を引き起こすリスクが高まります。
日常での感染防止対策
衣類・寝具のお手入れ:
- 50℃以上のお湯に10分以上漬けるか、衣類乾燥機の熱風乾燥を利用することでダニを除去できます。
- 水洗いや加熱が難しいものは、ビニール袋に入れて72時間以上密閉放置する方法も有効です。
- 通常疥癬の場合、室内全体への殺虫スプレー使用や大規模な消毒作業は原則不要です。
接触の制限:
治療が完了するまでの間は、長時間の皮膚の直接接触(添い寝や長時間のお抱えなど)をなるべく控えるようにしてください。
治療開始後のかゆみについて
薬剤によってダニ自体が死滅した後も、体内に残ったダニの抜け殻やフンに対してアレルギー反応が続き、数週間から数ヶ月にわたって強いかゆみが残存することがあります。
これは必ずしも「治療の失敗」を意味するものではありません。新しい皮疹や疥癬トンネルが増加していなければ、経過は順調と考えられます。残留するかゆみに対しては、必要に応じて抗ヒスタミン薬の内服やステロイド外用薬の併用により対症療法を行います。
治療の基本的な流れ
- 初診・検査:ダーモスコピーや鏡検によるダニの検出・診断。
- 治療開始:フェノトリン外用薬の塗布指示およびイベルメクチン内服薬の処方・服薬指導。
- 同居者の対応:ご家族・同居者への同時治療の実施。
- 再診・経過観察(1〜2週間後):病変の推移確認および2回目の処方・投与。
- 治癒判定・経過ケア:残留するかゆみへの対応とスキンケアの指導。
よくあるご質問(Q&A)
※当ページは一般的な診療情報の提供を目的としています。症状や体質により適した治療方針は異なりますので、激しいかゆみや気になる症状がある方は早めに専門医へご相談ください。
🏥 当院のご案内
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【医師監修・執筆】
院長:山田 信幸(やまだ のぶゆき)
- 医学博士
- 日本形成外科学会 形成外科専門医
- 日本レーザー医学会 レーザー専門医
- 日本救急医学会 救急科専門医
- 日本熱傷学会 熱傷専門医
川西市にて「やまだクリニック」を開院し18年以上。皮膚科・形成外科・美容外科領域において豊富な日帰り手術・レーザー治療実績を持つ。