川西市の皮膚科・形成外科による解説|眼瞼内反症・睫毛内反症について
眼瞼内反症・睫毛内反症とは?当院の治療方針
眼瞼内反症(主に加齢性)や睫毛内反症(主に先天性・小児期)は、まぶたの形や支えが変化することで、まつ毛が内側を向いて目(角膜・結膜)をこすってしまう状態です。ゴロゴロする、涙が出る、痛いといった症状が続くだけでなく、黒目に傷がつくと炎症が長引いたり見え方に影響したりすることがあります。
当院では、まず「まつ毛が目に当たらない状態にする」ことを最優先に、保険診療の範囲で治療を進めます。点眼薬や軟膏は目の表面を守る助けになりますが、まぶたの向き自体を治すことはできないため、根本的には手術が必要になることが多いです。
まず行うこと(診察での評価)
問診に加えて、視診(ルーペやダーモスコピーなどを使用して)、次の点を確認します。
○ どのまつ毛が、どの程度目に当たっているか
○ 角膜・結膜に傷や炎症があるか
○ まぶたのゆるみ(横方向・縦方向)や、皮膚・筋肉のかぶさりがどの程度あるか
根本治療:手術(保険診療が基本)
病気の原因と重症度、年齢に合わせて術式を選びます。
1)縫線法(埋没法/everting sutures)
医療用の糸でまぶたを外側に起こし、まつ毛の向きを外側に変える方法です。切開が少なく回復が早い一方で、後戻り(再発)が起こることがあります。海外の学術誌『British Journal of Ophthalmology』(1999年)の報告では、下眼瞼の加齢性内反に対する縫線法を平均31か月追跡したところ、再発率は15%でした。また、『Eye』(2017年)の後ろ向き研究でも、縫線法後の再発率は36〜60か月の追跡で21.1%と報告されています。
2)切開法(原因に合わせた調整を行う手術)
皮膚を切開し、原因になっている「ゆるみ」や「かぶさり」を修正して、まつ毛が当たらない状態を安定させる方法です。特に加齢性内反では、縫線法だけでなく横方向のゆるみも同時に直すほうが良好な経過を得られることがあります。『Ophthalmology』(2009年)に掲載されたランダム化比較試験では、縫線法単独(ES)と、縫線法に横方向のゆるみを引き締める手術を組み合わせた方法(ES+LTS)を比較しています。18か月時点において、ES群では改善が見られなかった事例が6例あった一方、ES+LTS群では0例であり、有意な差(P=0.02)が確認されました。このデータは、まぶたのゆるみを同時に直すことが再発を減らす方向に働く可能性を示しています。
3)お子さんの下まぶた(睫毛内反/epiblepharon)の手術
お子さんの場合は、成長に伴う顔つきの変化や目をこする癖などで経過が変わることがあります。状態により、切開法と非切開(埋没・buried sutures)のどちらが適するかを相談して決定します。『Scientific Reports』(2023年)のランダム化比較試験では、小児の下眼瞼睫毛内反に対して2つの術式を比較し、6か月時点で「まつ毛が当たらないこと」や「角膜の傷がないこと」を基準にその成果が評価されており、術式選択の参考にされています。
手術までの一時的な治療(保存的治療)
手術までの間や、目の傷を落ち着かせる目的で行います。
○ 点眼薬・軟膏:角膜を保護し、炎症を抑えるために使用します。
○ 抜毛(まつ毛を抜く):一時的に楽になることがありますが、再び生えてくるため根本的な解決にはなりません。
日常生活での注意点
○ まつ毛を自分で抜かない:短く硬い毛が生えると、以前より強く当たりやすくなることがあります。また、毛穴を傷つけて炎症が起こる原因にもなります。
○ 目をこすらない:角膜の傷が深くなったり、治りが遅くなったりすることがあります。
○ 目元を清潔に:目やにがある場合はこすらず、やさしく拭き取りましょう。
※手術後の洗顔や濡らし方については、医師の指示に従ってください。
自費診療を選択する場合の基準
病気としての治療は、保険診療の手術で対応できることが多いです。一方で、以下のように見た目のデザインを重視したい場合などは、自費診療としてご提案することがあります。
○ 二重の幅や形、左右差などを細かく指定したい場合
○ 医学的な機能障害としては軽度であるが、外見上の改善を強く希望される場合
治療の流れ
1. 診察:まつ毛の当たり方、角膜の傷、まぶたのゆるみを確認します。
2. 治療計画:縫線法か切開法か、原因に合わせて方針を決定します。
3. 手術:局所麻酔にて実施します。
4. 経過確認:必要に応じて抜糸や再診を行い、まつ毛の向きと角膜の改善状況を確認します。
5. 必要時:再発や左右差などがみられる場合は、追加の対応を検討します。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 点眼薬だけで治りますか?
A. 点眼薬は目の表面を守るために大切ですが、まぶたの向き自体を治すことはできません。まつ毛が当たり続ける場合は、角膜障害を防ぐためにも手術が根本的な治療となります。
Q2. 手術は1回で治りますか?再発はありますか?
A. 術式や体質により、再発の可能性はあります。縫線法は回復が早い一方で再発が起こり得ることが知られており、報告では平均31か月追跡で15%、別の報告では36〜60か月追跡で21.1%の再発率とされています。そのため、状態によっては再発を減らす目的で「ゆるみを同時に直す手術」を選択することがあります。
Q3. 子どもの逆さまつ毛は、必ず1回で治りますか?
A. すべての方に一律で必ず1回で治るとは言い切れません。成長に伴う変化や目をこする癖などが影響することもあり、術式選択も含めて状態に合わせた方針が必要です。小児の睫毛内反(下眼瞼epiblepharon)に関しては、術式を比較するランダム化比較試験などもあり、角膜の傷の有無を含めて慎重に成果が評価されています。
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