川西市の皮膚科・形成外科による解説|肥厚性瘢痕
手術やケガ、やけどの後に、傷跡が赤く硬く盛り上がったり、チクチクとした痛みやかゆみ、ひきつれ(つっぱり感)が生じたりした経験はありませんか?それは「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」と呼ばれる状態かもしれません。当院では、形成外科専門医の視点から、確かな医療エビデンスに基づいた丁寧な治療を行っています。
肥厚性瘢痕とは
肥厚性瘢痕とは、傷が治る過程において、皮膚を修復するためのコラーゲンが過剰に産生され、傷跡が赤く、硬く、盛り上がってしまう状態です。
よく似た病態に「ケロイド」がありますが、肥厚性瘢痕は一般に「元の傷の範囲内に留まって盛り上がる」という特徴があります。時間の経過とともに少しずつ落ち着いていく傾向はあるものの、平らに変化するまでには数か月から数年という長い期間がかかることがあり、その間にかゆみや痛み、周囲の皮膚が引っ張られるようなつっぱり感を伴うことがあります。
当院の治療方針
【基本原則】① 刺激と張力を減らす ➔ ② 炎症を抑える ➔ ③ 盛り上がりを平らにする
当院では、まず有効性と安全性が比較的確立されている「健康保険適用の標準治療」を最優先いたします。上記のステップに沿って、傷跡の状態に合わせた段階的なアプローチをご提案いたします。
まず行う治療(保険診療)
A) 物理的な保護(再燃予防の土台)
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◆ テーピング(サージカルテープ)
傷跡に日常的にかかる摩擦や「引っぱり(張力)」を軽減し、赤みや盛り上がりの悪化を防ぎます。特に関節の周囲、胸元、肩など、皮膚の動きが大きく張力がかかりやすい部位で極めて重要です。 -
◆ シリコーンシート・シリコーンジェルによる保護
国際的なガイドライン等では第一選択として位置づけられることも多い方法ですが、国内の公的保険診療においては適用外(自費)となるケースが多いため、当院ではまず保険診療内で実施可能なテーピングを中心に詳しくご説明し、必要に応じて選択肢の一つとしてご案内しております。
B) 外用薬・貼付薬(第一選択)
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◆ ステロイド外用薬・ステロイドテープ
局所の炎症を鎮め、つらいかゆみや痛みを軽減しながら、盛り上がりを平らにしていくための中心的な治療です。傷跡の部位や皮膚の状態に合わせて適切に選択します。 -
◆ ヘパリン類似物質(外用薬)
皮膚の乾燥やひきつれ感を和らげるための保湿目的、あるいは血行を促して組織を柔軟にするための補助的アプローチとして併用します。
C) 内服薬(必要な場合)
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◆ トラニラスト内服薬
かゆみや痛みの自覚症状が強い場合や、体質的に赤み・盛り上がりが長引きやすいと考えられる場合に補助的に処方を検討します。なお、お薬の働きの現れ方には個人差があります。
D) 局所注射(外用で変化が不十分な場合)
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◆ ステロイド局所注射(トリアムシノロン等)
盛り上がりが顕著な場合や組織が非常に硬い場合、あるいは強いかゆみ・痛みが続く場合に、病変の内部へ直接お薬を注入して扁平化を目指します。近年の医学研究(メタ解析など)においても、トリアムシノロン単独での加療より、前述のシリコーンシート保護や他の薬剤との併用アプローチを組み合わせることで、より良好な経過が期待できると報告されています。
日常生活で大切なこと(悪化を防ぐセルフケア)
下着のゴム、衣類の縫い目、ベルトが繰り返し擦れる部位は、刺激によって症状が悪化しやすくなります。可能であれば医療用テープ等で保護することが望ましく、当院にて具体的な貼り方を丁寧にご指導いたします。
傷跡をゴシゴシと力強くこするのは厳禁です。きめ細かい泡をクッションにして優しく包み込むように洗い、入浴後は優しく水分を拭き取ってください。
傷跡に赤みが残っている時期は、紫外線による色素沈着を引き起こしやすくなります。日焼け止めを塗る、または遮光効果のあるテープで保護するなどの適切な対策を行いましょう。
関節の周囲、胸部、肩などは日常動作による張力が強くかかるため、盛り上がりの改善に時間を要することがあります。運動時などは、あらかじめテーピングを継続して皮膚への負担をサポートすることが有用です。
保険治療でコントロールが難しい場合:自費診療の選択肢
保険診療による治療を一定期間継続しても、「強いかゆみや痛みが和らがない」「赤みや盛り上がりが非常に頑固である」「ひきつれや見た目の大幅な改善を希望される」といった場合には、自由診療(自費)によるアプローチを検討の選択肢に加えることがあります。
A) レーザー治療(自費)
レーザー機器等を用いたアプローチは、傷跡の「赤み」「硬さ」「凹凸」を補助的に整える目的で使用されます。臨床試験の統合データ(ネットワークメタ解析など)においては、特定の低出力レーザー(LLLT)や色素レーザー(PDL)が傷跡の評価指標(VSSスコア)の改善において上位に挙げられるなど期待される報告もあります。ただし、導入される機器や治療法により臨床データにばらつきがあるため、個々の状態に合わせて適切に選択する必要があります。
B) 瘢痕修正術(自費:当院で実施)
当院では、保険治療を継続しても改善が頭打ちになってしまった方や、整容面(見た目の美しさ)や引きつれの悩みが強い方に対し、自由診療にて瘢痕修正術(傷跡の作り直しの手術)を行っています。
■ 瘢痕修正術で目指すこと
- 傷跡の幅、段差、表面の凹凸を目立ちにくく整える
- 傷の向きや皮膚にかかる引っぱり(張力)を調整し、つっぱり(ひきつれ)を和らげる
- 可能な範囲で、天然のシワや皮膚の割線(スキンライン)に沿うよう緻密にデザインし、傷跡を目立たなくする
■ 代表的な術式(状態により選択)
- 瘢痕切除+形成外科的縫合:傷跡を一度きれいに取り除き、顕微鏡レベルの丁寧な層状縫合や張力分散縫合によって皮膚を美しく合わせます。
- Z形成術など(皮弁作成):傷の向きや角度を変える特殊な切開を加え、傷にかかる引きつれの力を効果的に分散させます。
⚠️ 重要:手術は“単独”で終わらせません
瘢痕を形成する反応は、元々は皮膚が「傷を治そうとする生体防御反応」であるため、単に手術を行うだけでは再び盛り上がってしまう(再発)リスクが拭えません。そのため当院では、術後もテーピングによる張力低減の継続や、必要に応じたステロイド外用・貼付・局所注射などの後療法を巧みに組み合わせ、再発を抑え込むトータルケアをご説明・実践しております。
治療の流れ
- 診察・詳細な評価:傷跡の範囲、硬さ、赤みの度合い、かゆみや痛みの有無、その部位にかかる皮膚の張力を細かく診察し、ケロイドとの鑑別を慎重に行います。
- 保険治療の開始:まずは基本に忠実に、適切なテーピングによる保護、およびステロイド貼付薬や外用薬(必要に応じて内服薬)の処方を開始します。
- 経過に合わせた治療調整:定期的な通院の中で変化を評価し、もし変化が乏しいと判断される場合は、ステロイド局所注射などへ段階的に加療を強化します。
- 難治例・整容面へのアプローチ検討:患者様のご希望や症状の推移に応じて、自由診療となるレーザー加療や瘢痕修正術の適応について丁寧にご説明します。
- 長期的なフォローアップ:傷跡の再燃や再発を防ぐために、適切な期間にわたる保護指導と治療を根気強く継続します。
よくあるご質問(Q&A)
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