脂肪腫(ライポーマ・脂肪肉腫との鑑別)の治療について
脂肪腫(ライポーマ・脂肪肉腫との鑑別)
治療の基本方針
脂肪腫(医学名:ライポーマ)は、皮膚の下にある脂肪組織の細胞が局所的に過剰に増殖し、薄い線維性の被膜(ひまく)に包まれた柔らかい塊(腫瘍)を形成する、軟部組織の良性腫瘍の中で最も頻度の高い疾患です。背中、肩、太もも、あるいは腕などの皮下にできやすく、触ると痛みがなくツルツルと良く動く(可動性が良い)のが特徴です。
当院の基本方針は、「最新の診療ガイドラインおよび医学的エビデンスに基づき、安全性を最優先に考慮した厳密な事前スクリーニングを行うこと」です。 脂肪腫は放置すると数センチから10cmを超える大きさにまで肥大化することがあります。腫瘍の大きさが「5cm以上」ある巨大なケースにおいては、一見良性のように見えても、稀に存在する悪性軟部腫瘍(脂肪肉腫など)との識別が極めて重要になります。そのため当院では、事前に連携医療機関にてMRI検査等を行い、安全性を100%確認(鑑別診断)した上で精密な切除手術へと臨みます。 重要な神経や血管を1ミリも傷つけることなく、傷跡が最も目立たなくなるよう、皮膚のシワの方向(RSTL)を厳密に計算した手術を行います。
こんなお悩みはありませんか(チェックリスト)
- ・背中や腕、太ももの皮膚の下に、ゴムのようになだらかで柔らかいしこりがある
- ・しこりを指で押すと、皮膚の下でツルツル、あるいはゴロゴロと左右によく動く
- ・触っても特に痛みはないが、数年かけて徐々にサイズが大きくなって目立ってきた
- ・服の上からでも、そこだけ皮膚がポコッと大きく盛り上がっているのが分かって格好が悪い
- ・他院で「大きな脂肪の塊」と言われたが、悪性の可能性がないか精密に調べてから安全に取りたい
主な特徴・治療法
5cm以上の巨大腫瘍への「事前MRI連携」: ガイドラインの基準に基づき、サイズが5cmを超える大きな脂肪腫に対しては、手術前に提携病院にてMRI検査を受けていただきます。画像データから「脂肪肉腫(悪性)」の兆候がないかを専門の目で厳密に解析・鑑別し、安全が担保された状態で当院での日帰り切除術へと進みます。
解剖学に立脚した精密摘出: 脂肪腫は周囲の正常な脂肪組織や、その下を走る筋膜、神経、血管と接しています。これまでの豊富な手術経験から、重要な血管・神経を完璧に温存しながら、脂肪腫を包む被膜の境界を綺麗に剥離(はがす操作)して丸ごと摘出します。
死腔(しくう)を作らない階層縫合: 大きな脂肪腫をくり抜いたあとの空間(死腔)をそのままにして閉じると、内部に血の塊(血腫)が溜まり、感染の原因になります。当院では内部の組織を何層にも分けて丁寧に縫い寄せる(死腔の閉鎖)ことで、術後のトラブルを未然に徹底防衛します。
治療の流れ(脂肪腫)
① 丁寧な触診・視診 ➔ サイズの計測 しこりの柔らかさ、大きさ、深さ(皮下にあるか、筋肉の奥にあるか)を丁寧に触診。可動性を確認し、腫瘍の大きさが5cm以上の基準に該当するかを厳密に計測します。
② MRI検査による鑑別診断(5cm以上の場合) サイズが大きく精密検査が必要と判断される場合は、スムーズに提携の画像診断クリニック等へご紹介し、事前に「MRI検査」を受けていただきます。
③ 検査結果の評価 ➔ 術前シミュレーション 届いたMRI画像を専門医の目で読影し、悪性(脂肪肉腫)の所見がないかエビデンスに照らし合わせて最終確認。安全を確認後、切開する場所と術後の傷跡について皮膚上にデザインを示しながら詳しく解説します。
④ 確実な局所麻酔 & 精密剥離摘出術 局所麻酔をしっかりと効かせた上で、デザインに沿って最小限の切開を行います。周囲の組織から脂肪腫の塊を優しく、傷をつけずに剥離して、一塊として完全に摘出します。
⑤ 階層的な特殊内縫い ➔ 傷跡の成熟フォロー 腫瘍が抜けた空間を医療用の吸収糸(体内で溶ける糸)で細かく縫い閉じ(死腔閉鎖)、続いて皮膚の表面に張力がかからないよう形成外科の真皮縫合を行い、最後に表面を極細の糸で精密に閉じます。約1〜2週間後に抜糸を行います。
- ・サイズ5cm以上の難治・巨大腫瘍に対する、MRI検査を用いた厳密な悪性(脂肪肉腫)鑑別システム
- ・重要な血管・神経を完璧に温存する、解剖学に基づいた精密剥離技術
- ・術後の血腫や感染を防ぐための、死腔(組織の隙間)を完全に無くす階層縫合
- ・保険診療(※サイズが大きく日常生活や更衣に支障がある、増大傾向があるなどの理由による外科的摘出は、健康保険の適応となります。※事前MRI検査についても保険診療にて受けていただけます)
よくあるご質問(Q&A)
Q. 脂肪の塊(脂肪腫)が5cm以上あると言われました。なぜ手術の前に「MRI検査」が必要なのですか?
A. 皮膚の下にできる脂肪の塊の大半は良性の「脂肪腫」ですが、まれに脂肪組織から発生する悪性腫瘍(悪性軟部腫瘍である『脂肪肉腫』)が混ざっていることがあるからです。特に「サイズが5cmを超えて大きいもの」や「急速に大きくなっているもの」「太ももや筋肉の奥深くにあるもの」は、見た目や触診だけで良性・悪性を100%区別することは不可能です。そのため、エビデンス(診療ガイドライン)に則り、手術の前に必ずMRI検査を行い、内部の組織の性質を精密に確認してから切除を行うことが、患者様の命と安全を守るために極めて重要となります。
Q. もしも事前のMRI検査で「悪性(脂肪肉腫)」の疑いが出た場合はどうなりますか?
A. 万が一、事前MRI検査の段階で悪性腫瘍(脂肪肉腫)の兆候や疑いが1%でも認められた場合は、当院で無理に切除を行うことは決していたしません。その場合は速やかに、広範切除手術や専門的な化学療法などが即座に対応可能な、信頼できる大学病院や総合病院の専門科(整形外科の骨軟部腫瘍班など)へと責任を持ってご紹介し、患者様が最善の高度医療を受けられるよう迅速にバトンを繋ぎます。