閉塞性動脈硬化症(PAD・ASO)の治療について
閉塞性動脈硬化症(PAD・ASO)
治療の基本方針
閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患:PAD)は、下肢静脈瘤とは逆に、足の「動脈(酸素や栄養を運ぶ大切な血管)」が、動脈硬化(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などが原因)によってドロドロに狭くなったり(狭窄)、完全に詰まったり(閉塞)することで、足先への血流が著しく途絶えてしまう深刻な血管疾患です。 当院の基本方針は、「救急および形成外科の第一線で数多くの重度の血流障害・組織壊死を診てきた豊富な臨床経験に基づき、手遅れ(足の切断リスク)になる前に、動脈の狭窄を早期発見して専門医療機関へ命を繋ぐこと」です。足の冷えや歩行時の痛みは、単なる「年齢のせい」「整形外科の神経痛」と見過ごされがちですが、当院ではエビデンスに則った厳密な初期評価を行い、患者様の足の切断リスクと血管の健康を徹底して守ります。
こんなお悩みはありませんか(チェックリスト)
- ・一定の距離(50mや100mなど)を歩くと、ふくらはぎや太ももが締め付けられるように痛くなり、歩けなくなる(間欠性跛行:かんけつせいはこう)
- ・足の痛みが強くても、数分間立ち止まって休むと痛みが嘘のようにスッと消え、また歩けるようになる
- ・左右の足を触り比べたときに、片方の足(特に足先や足の裏)が明らかに氷のように冷たい
- ・じっとして寝ているだけでも、足先や足の指がじんじんと激しく痛む(安静時疼痛)
- ・足の指先や踵(かかと)にできた小さなキズや靴擦れが、何ヶ月経っても全く治らず黒ずんできた
主な特徴・治療法(早期発見と高度医療連携)
間欠性跛行(かんけつせいはこう)の厳密な見極め: 「歩くとふくらはぎが痛くなり、休むとまた歩ける」という症状は、閉塞性動脈硬化症の極めて典型的なサインです。腰の病気(脊柱管狭窄症など)による神経性の痛みとの違いを、動脈の拍動を直接触知するなどの専門医の診察により厳密に見極めます。
重症下肢虚血(壊疽・潰瘍)への水際防衛: 動脈が完全に詰まり、足の指先が黒くなってくる(壊疽:えそ)一歩手前の段階や、キズが治らない「重症下肢虚血」の状態に対しては、一刻の猶予も許されません。形成外科・救急の知識から組織の血流状態を的確にアセスメントします。
カテーテル治療やバイパス手術への迅速なトリアージ: 当院でスクリーニングを行い、閉塞性動脈硬化症の疑いが極めて高い場合は、直ちに血管内治療(カテーテルで風船を膨らませて動脈を広げる治療)や人工血管バイパス手術、あるいは薬物療法が可能な高度専門医療機関(循環器内科・血管外科など)へ迅速に紹介・連携し、足の切断リスクを未然に徹底回避します。
治療の流れ(閉塞性動脈硬化症のスクリーニング)
① 丁寧な問診 ➔ 歩行障害の確認 どれくらいの距離を歩くと足が痛くなるか、休むとどれくらいで回復するか、また糖尿病や高血圧、長年の喫煙歴などの動脈硬化のリスク要因を詳しく伺います。
② 動脈の拍動触診 ➔ 左右の皮膚温チェック 足の甲(足背動脈)や足首の内側(後脛骨動脈)を直接指で触れ、心臓からの拍動が足先までしっかり届いているかをチェック。同時に左右の足の冷えの左右差を評価します。
③ 病態の説明 ➔ リスクレベルの解説 足の動脈が狭くなっている可能性について、放置した場合のリスク(安静時痛や将来的な壊疽のリスク)を含め、エビデンスに基づいて誠実にわかりやすく説明します。
④ 血管拡張・抗血小板内服薬による初期対応(状態に応じる) 専門病院での詳しい検査(ABI検査や血管造影CTなど)へ進む間、または軽症の段階において、血をサラサラにして血管を広げるための適切な内服薬をエビデンスに即して一時的に処方・管理します。
⑤ 高度専門医療機関(血管外科・循環器内科)への迅速なご紹介 検査データや触診所見をもとに、速やかにカテーテル治療等の対応が可能な病院へ紹介状(診療情報提供書)を作成し、バトンを繋ぎます。
- ・足の切断を防ぐための、間欠性跛行(歩行時の痛み)の的確な初期診断
- ・救急・形成外科の豊富な知見を活かした、足の壊疽(壊死)のリスクスクリーニング
- ・保険診療(※当院での初期診察やスクリーニング、処方はすべて保険適用です。高度な血管再生手術やカテーテル治療はご紹介先の総合病院等で行われます)
よくあるご質問(Q&A)
Q. 「歩くとふくらはぎが痛くなる」のですが、整形外科の神経痛とは違うのですか?
A. 非常に見分けがつきにくいですが、決定的な違いがあります。整形外科の病気(腰部脊柱管狭窄症など)による痛みは、歩く時だけでなく「ただ立っているだけ」でも腰や足が痛くなったり、前かがみになると楽になるのが特徴です。一方で、閉塞性動脈硬化症(動脈の詰まり)の場合は、「立っているだけなら痛まないが、歩いて足の筋肉を使うと酸素が足りなくなって激しく痛み、立ち止まって休むと数分でスッと痛みが消える」という明確な特徴があります。足の甲の血管を触ってドクドクという拍動が弱い場合は、動脈硬化の可能性が非常に高いです。
Q. 糖尿病を持っています。足の指の小さなキズが1ヶ月以上治らないのですが、様子を見て大丈夫ですか?
A. いいえ、絶対にそのまま様子を見ずに、一刻も早く当院を受診してください。 糖尿病がある方は元々動脈硬化が進みやすい上に、神経が麻痺して足の痛みに気づきにくい傾向があります。血流が途絶えている状態でできた傷は、組織に酸素や栄養、免疫細胞が届かないため、どんなに良い軟膏を塗っても絶対に治りません。放置すると、小さなキズからあっという間に細菌が繁殖し、足の指先全体が黒く死んでしまう「壊疽(えそ)」へと進行し、最悪の場合足を大きく切断しなければならなくなります。形成外科・血管管理の視点から、早急に血流とキズの状態を確認する必要があります。